3年の飼育経験から考えるヘルマンリクガメなどの入門種リクガメ飼育方法 初心者に必要なもの、知識から
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本記事はインドホシガメ飼育に取りつかれた僕が、飼育の中でつかんだリクガメ飼育のコツをちりばめて基本を網羅的にまとめたものです。
これを読んでいただければ安心してリクガメ飼育をできるようになると思います。
少々長いですがぜひ最後までお付き合いいただければと思います!
リクガメ飼育に必要なもの
リクガメの飼育に必要なものは以下の通りです。
これらで一通りの飼育セットになります。
・飼育ケージ
飼育ケージの選択についてはいろいろな選択肢があります。
水槽
爬虫類向けケージ
木製ケージ(例)
上記のうち、初心者向けの種類であれば、爬虫類向け飼育ケージが一番メンテナンス性や通気性があり、扱いやすいと思います。
ただし、我が家にいるインドホシガメのような非常にクセが強く飼育の難しい多湿系の種であれば、通気性を無視してでも湿度を上げるべきであるため、木製ケージが良い選択になります。
ケージ選択にはポイントとそれぞれのメリットデメリットがあります。
保温器具
保温もリクガメ飼育では大切な要素となります。
昼間は太陽光の直射による温度上昇を再現するためにバスキングスポット(種によるが35~45℃程度の場所)を作る保温球を点灯することになります。
また、飼育ケージ内の環境温度20℃以上に上げてやることで、飼育に適した環境を作ることが必要です。
そのため、以下のような機器を使って、空間を暖めて居心地がいい空間を作ることがリクガメの基礎です。
バスキング(日光浴)ライト
空間温度上昇用の遠赤外ヒーター
暖突
その他お勧めの保温器具もいろいろありますが、使い勝手の良い設置に適したものを使用して温度を維持します。
また、タイマーやサーモスタットを使って、時間や温度を決めて機器を動作させると良いでしょう。
サーモスタット
タイマー
床材
ヤシガラマットが保湿性能に優れており、非常に良い床材になります。
リクガメの飼育には常に一定の湿度が必要であるため、保湿性能は重要です。
ヤシガラマット
湿度管理についてはのちに詳しく解説します。
そのほかの必要なもの
リクガメのような昼行性の爬虫類の飼育には紫外線(UVB波長)が必要になるため、そこを補うためのライトを設置します。
紫外線をある程度浴びることにより、カルシウム代謝に必要となるビタミンDが体表で生成されます。
これがないと、骨の維持ができなくなり、クル病や甲羅の軟化などの病気になる可能性があるため、カルシウムを良く含むバランスの取れた食事と合わせて飼育の重大事項になります。
大きな甲羅を持ったリクガメはカルシウム代謝が重要ですので、カルシウム剤の餌へのふりかけも行うと良いでしょう。
カルシウム剤
紫外線ライト
保温とUVを同時に実現できる下記のようなものもあります。
この商品であれば、上記のバスキングライトも兼ねることができ、ライトの数を減らすことができます。
あと必要なものは以下2つです。
水入れ
エサ入れ
これらが最低限必要なものであり、お迎えする前にそろえておくべきものです。
一例としては上図のような感じで、床全体にヤシガラマットをひきます。
水入れとエサ入れはお好きなところに設置します。
なお、安価で大量に資材を購入する方法もありますが、一応参考までに自己責任で考えてください
お迎えの前に! リクガメの寿命を考える
環境が準備できたらお迎え!といきたいところですが、リクガメは長生きですので、場合によっては一生の付き合いになるかもしれません。
リクガメの寿命は非常に長く、健康に飼育できれば50年以上生きる個体も普通にいます。
ゾウガメに至っては150年以上生きた実例もあります。
リクガメは長寿であるため、本当に寿命まで飼育できた場合は先に飼育者の方が亡くなるかもしれません。
ですので、最も重要なものとしては、飼育するうえでの心構えと愛情です。
心構えと愛情があれば、難しい種でも飼育は可能です。
ただし、かなり苦労はします。
僕が初めてお迎えしたリクガメはインドホシガメでこの種はリクガメの中でも難関種です。
初めはとても苦労して維持していました。(飼育とはとても言えない)
この時は生かしているのがやっとで非常に苦労した思い出があります。
それでも、愛情を注ぎ、頑張って飼育を続けることで、見えてくるものがありますし、飼育に必要となる技術や知識を貪欲に求めて、設備を改良しながら自分なりの飼育方法が確立できました。
3年かけて作った我が家の飼育環境ではインドホシガメが6頭元気に生活をしています。
▼インドホシガメ
飼育種の選択と選び方
入門種 ヘルマンリクガメ、ロシアリクガメ、ギリシャリクガメ
基本的に入門種と言えども飼育は難しいのがリクガメです。
日本と気候の近いチチュウカイリクガメ属でも、ケージ内で人が作り出した環境で飼育するのは難しく、冬には苦労することが多くなると思います。
飼育難易度的にはケージ飼育よりも年中室外放し飼いの方が簡単であると考えていますし、実際に年中放し飼いで繁殖まで成功させている人もいます。
入門種としては以下三種が良く飼育されています。(下に行くほど難しい)
ヘルマンリクガメ
ギリシャリクガメ
ロシアリクガメ(ヨツユビリクガメ、ホルスフィールドリクガメ)
個体のえらびかた 元気な子をお迎えしよう!
入門種としましたが、これはあくまでCB(飼育下繁殖)個体に限ったことであり、WC(野生採取)個体であれば調子の悪い状態のままで売られている場合も多いので、WCの難易度はグンと上がります。
入門種であれリクガメの飼育経験がない場合は調子のよいCB個体を選ぶことが長期飼育を目指す大前提になります。
初めにお迎えする個体を選ぶ確認ポイントとしては以下の3点です
・鼻水がでていないこと
・目が潤っている(生気がある)こと
・よく動くこと
これらを確認することで個体の健康度合いがわかりますので、より調子のよい個体を選んでください。
このポイントがすべて真逆で悪い方に当てはまった場合は入門種であっても生かすためにはかなりのスキルを必要とするか、生かすこと自体もすでに難しい個体です。
ここまで調子が悪いと入門種でもあったとしても、立ち上げるのは鼻水が出ている程度のちょっと調子の悪いインドホシガメの方が簡単です。
繰り返しになりますが、初めてリクガメを飼育する際は野生採取(WC)個体ではなく飼育下繁殖(CB)個体を選んでください。
健康度合いが全く違い、飼育難易度はCBの方がかなり楽です。
CBであれば、寄生虫を持っている可能性も少なく、病気への抵抗力が大きく違います。
海外から輸入される場合、長時間の移動に耐えなくてはなりませんが、その際に調子をくずしてしまうリクガメが多くいます。
場合によっては内臓にダメージを負って一生抵抗力が弱い個体になってしまったりします。
リンク参考:将来的には目指したい!飼えるリクガメ10選
飼育環境 温湿度
リクガメ飼育環境のキホン
飼育環境としては種ごとに若干違いますが、基本は同じです。
理想の飼育ケージサイズも種によって異なってきますが、最低でも90cm水槽(床面積90cm×45cm)サイズ以上が必要です。
理想のケージサイズを確保することができれば、いっぱい歩き回りいっぱい運動して健康な体を作ることができます。
飼育ケージを用意したうえで、上にも書きましたが中には床材を敷いて飼育します。
ヤシガラマットは粗びきと粉状のものがありますが、お好みで問題ありません。
ヤシガラは保湿性が非常に高く、湿った場所を作るのに非常に効果的な床材です。
また、便も絡めて固まることで、掃除もしやすくなります。
毎日飼育環境をチェックして掃除をしましょう。
湿度が大切
また、僕は経験から湿度が飼育の重要なポイントだと考えています。
湿度は種によりますが、乾燥系とされていても最低でも50%は必須となります。
「乾燥系」と聞くとカラカラの空気で湿度30%程度かなっと思うかもしれませんが、日本の春、秋のような湿度です。
ここで、この状態をすぐに作って維持できるならば問題ないですが、冬場に50%の湿度を維持するのは毎日ある程度の手間をかけてやる必要があります。
日本の冬の乾燥には耐えることができませんので注意してください。
ただでさえ乾燥しすぎな冬場の空気に加温を入れてやるということは、何もしないと湿度が極端に低い、高温低湿な状態になることを意味しており、気づかないうちに超低湿度環境になる可能性があるということです。
そうなると人間も風邪をひきやすくなるのと同じく、リクガメも鼻水や肺炎にかかりやすくなりますので、ここから命にかかわる状態になる場合が非常に多いです。
そのため、リクガメ飼育では入門種と言えども湿度にかなり気を配って飼育することが冬場を乗り越えるためのキモになります。
定期的に湿度を確認して加湿を行うことが冬の飼育では必須です。
多湿系リクガメの飼育
加湿については、インドホシガメなど「多湿系」に入るものでは特に重要で60%でも乾燥している状態となります。
多湿系は80パーセント以上を維持するつもりで環境を作るので飼育環境は結露などが激しく、飼育以外にも衛生的な面で気を使うことがあります。
多湿系の加湿には加湿能力の高い超音波式加湿器を使うと良いです。
ただし、超音波式は水や加湿器に病原菌がついてるとそのまま拡散してしまうデメリットがあるため、きれいな水を使用し定期的に加湿器本体の掃除が必須です。
温度は25~30℃を目指し、保温球で最高温度35℃程度のバスキングスポットを可能であれば夜間もホットスポットを作るとよいです。
温度勾配を作って快適な住み心地を
温度は高い場所と低い場所を意図して作り、温度勾配のある環境を用意することがポイントです。
野生下では自由に動き回って快適な環境を探すことができますが、飼育下では狭いケージの中がすべてです。
いろいろなスポットを作って、リクガメが望む温度の場所に移動できるように工夫して飼育設備内に温度勾配は作ります。
リクガメは爬虫類(変温動物)ですので、その場の温度がそのまま体温になります。
体温をあげることによって代謝が上がり、免疫力が上がります。
温度が低くなってしまうと病気になるリスクが増してしまいます。
そのうえで日々の健康観察も行って病気を予防するのです。
爬虫類はなかなか異常を体に出して飼育者に調子が悪いことを教えてくれません。
そのため、飼育者は先回りして気づくためのポイントを押さえたチェックをすることを怠らず、真正面から飼育している個体に向き合って過ごしていく必要があります。
そうすることによって病気は防げるものが多いですし、悲しい結果は防げるのです。
えさについての考え方
餌についてはバランスよく野菜や野草を与えるのが一番であり、配合飼料はその補助食品的な立ち位置で使用するのが良いです。
配合飼料
バランスの良い食事によって健康を維持することも飼育環境としては重要となります。
病気とその対策
リクガメの病気はいろいろとあります。
その種類と対策方法を発生頻度順に以下にまとめました。
1鼻水
2便秘、結石
3脱水
4卵詰まり(メスのみ)
5中耳炎
これらのうち、一番よく発生する鼻水の対策は飼育環境の温湿度を上げてやることです。
便秘、結石では温浴が効果的です。
病気については、どんなものがあるか知っておくことも飼育に必要な知識ですので、ぜひリンクを見てみてください。
ここでは細かい症状は記載していませんが、各記事で実例を交えて症状や予防、対策について記載しています。
なお、♀は♂がいなくても性成熟すれば卵を産みます。
抱卵の兆候が出たら産卵させてやらないと卵詰まりで死亡してしまいます。
出来れば♂を飼育するのが心配も少なく楽ではあります。
治療を行う場合は動物病院へ行くのが最良の選択肢ですが、以下の方法で自分で治療も試すことができます。
飼育全般についての考えかた
人によってどう考えてどう行動するかはそれぞれですが、僕は飼育については自分の余力を超えない範囲で行うべきであると考えています。
というのも、生き物の命がかかっている趣味であるため、場合によっては非常に大変な思いや苦しい想いをすることが必ずあります。
そのような場合に対して、余力がないと適切な対応ができずに悔しい想いをすることもあるかもしれません。
それを避けるためにも飼う個体数や種類を制限したり、飼育設備の予備をストックしておくことも考えるべきであります。
爬虫類の飼育は哺乳類から比べると簡単に思え、次々とお迎えしたくなってしまうかもしれませんが、それをこらえて自分のできる範囲内をしっかりと守ることが大切であると考えます。
多頭飼育
リクガメの多頭飼育は注意が必要で、決して簡単とは言えないものです。
基本的にリクガメを含めた爬虫類は同種が近くにいる環境では生活しておらず、広い自然の中で個別に生活を行っています。
その前提に対して、多頭飼育を行うということは「不自然な」環境を作っているということになり問題が起こりうる可能性をはらむ行為です。
特に発情期の♂同士は♀を巡って激しく争うこともあり、その結果によって負傷を負うこともあります。
特に上記で挙げた入門種の♂同士多頭飼育は絶対に避けるべきです。
これらの種は気性が荒い個体が多く、特に発情期になれば♂同士でぶつかり合って負けた個体が弱っていく場合が非常に多いです。
♀については比較的多頭飼育がやりやすいですが、やはり相性問題があり関係がうまく合わない個体はとことん会いません。
ペアや♀同士でも個体間の強弱が強く出るため、常に多頭飼育を行うことはリスクがあります。
最悪の場合は弱い個体が委縮してストレスを大きく受けた結果、拒食に陥って衰弱、死亡することもあります。
多頭飼育に挑戦する場合は、必ず予備の飼育セットを用意して、もし関係がうまく築けない場合は単独飼育にすぐに切り替える準備をしたうえで試してみるべきです。
インドホシガメのような穏やかな種であれば成功する確率が高いですが、飼育ケージのサイズは飼育個体数にあわせて大きくする必要があります。
我が家ではインドホシガメ6頭の多頭飼育に成功していますが、飼育スペースは2.5㎡ほどの非常に大きなものになります。
その中で、自由に動けるように配置を工夫して設備を設置し。予備も確保したうえで常に相性を気にしながら飼育しています。
多頭飼育のデメリット
ただし多頭飼育には以下のようなデメリットがあります。
- 個体ごとの観察がおろそかになりがち(食事、排便等)
- 病気の初期症状の見落とし
- 相性問題を考える必要がある
- 交尾に至りにくい
リクガメを飼う
こころがまえ 外出について
リクガメは非常に可愛いペットとなる生き物であり、最近飼育を始める人が増えています。
入門種では1万円程度でお迎えでき、寿命が非常に長い一生の付き合いができるペットです。
また爬虫類のペットはよく家を空けがちな一人暮らしの方にもおすすめであり、リクガメは1週間程度であれば安心して家を空けることができます。
爬虫類でありながら哺乳類のペットのように良く慣れてくれるリクガメはお世話をしていても大きな癒しを与えてくれます。
特にヘルマンリクガメやアルダブラゾウガメのようななつくといっても過言ではないそぶりを見せる種もいます。
そんなリクガメですが、飼育はお世辞にも簡単とは言えず爬虫類の中では比較的飼育が難しい部類です。
ここではそのようなリクガメを健康的に飼育し、長年にわたって付き合っていくのに必要な設備や知識を基礎からまとめてご紹介します。
まず初めにですが、リクガメを飼育するその方法を紹介する前に注意点から書いていきます。
リクガメは爬虫類の中でも特に飼育方法にクセのある比較的飼育の難しい生き物です。
外出をする場合は人が管理しなくても大きく環境が変化しないように飼育環境を工夫してセットする必要があります。
ほっておいて外出、といったわけにはいかなくなりますので、覚悟をもって飼育するかどうか決める必要があることは他の生き物と変わりません。
こころがまえ 匂いについて
なお糞は爬虫類の中では臭い方ですが、上手く飼育出来ていれば部屋中ににおいが充満するまでは行きません。
部屋中ににおいが充満する場合は食生活が良くない証拠です。
食物繊維中心の食生活に改めて、温浴をしてやるとにおいは減っていきます。
これらが問題なければ飼育は誰でも十分に可能です。
まとめ
このページではリクガメ飼育の基本をまとめました。
リクガメの飼育には主に電気代を中心に結構な費用も掛かります。
お迎えの方法も以下2通りの方法があります。
・爬虫類専門店
・展示即売会
リクガメの生体価格については常に変動しているためここでは載せません。
ぜひ飼育の前にいろいろな情報源から情報を得て、まず飼育するかしないかから熟考して貰えればと思います。
リクガメ飼育は決して簡単ではなく、日々の体調の確認や飼育環境の維持など爬虫類の中では手間のかかる生き物です。
ですが、リクガメはかわいいしぐさをして癒してくれる良いパートナーとなることができるため、飼育したいと思っている、飼育を始めた人も多くおり、健康に飼育していくための情報を正しくまとめて行く必要があると感じています。
生き物の命を扱う飼育は、非常に楽しいことも苦しいこともある趣味です。
飼育を始められたら、ぜひ同じリクガメ飼育者との交流をもって見るのも楽しいですよ!
自分の目線では考えも及ばなかった発見があります。