リクガメ飼育者が種の存続のために考えるべきこと
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リクガメを飼育について、僕はいろいろな人に話を聞いてきましたが、実に多彩な種が国内で飼育されていることを実感しています。
入門種から非常にマニアックな種まで実に多彩な種が飼育者それぞれの思いを受けて飼育されています。
現在のリクガメ事情
「入門種」として流通しているヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメを飼育している人は結構多く、順調に20年以上育てている人もいる一方で、お迎え後すぐに死んでしまったといった話を聞いたりすることがあります。
イベントで生体を見ると安心サイズまで育っている良い個体が妥当な値段になっているかたわらで明らかに調子の悪いベビーが安価に売られていたり、販売者、ショップもピンキリです。
ケヅメリクガメやアルダブラゾウガメのような大型種も販売されており、飼いきれるのかなと心配になったりすることもあります。
そのような中で、我々リクガメ飼育者は飼いたい種を探して、生体を見て飼育個体を決めることが一般的かと思います。
僕はリクガメ飼育をインドホシガメから始めましたが、飼育は簡単ではなく、必要な設備や心構えがどんなものであるか、常に調べて考えながら飼育を続けてきました。
昔は3頭2万円程度でインドホシガメが売られていたといった話も聞いたことがありますが、僕がお迎えしたタイミングでは1頭3万円程度です。
3万円であれば一目ぼれから簡単に飼育を始めることができましたが、今では10万円を超えるようなお高いカメになってしまいました。
このような状況の変化を実際に体験し、感じてきた中から今後のリクガメ事情について考えてみようと思います。
リクガメ飼育の今後
僕は「入門種」とされ、繁殖も多く行われているヘルマンリクガメ等については今後も問題なく飼育を始めることができるとみております。
しかし、僕が力を入れて繁殖を目指しているインドホシガメのような国内繁殖があまりされておらず、これからの種の保全のことを考えて飼育者が動かないといけない種については新規に飼育を始めること自体が難しくなると考えています。
まず、前提としてリクガメ科全体がワシントン条約附議書Ⅱに記載されており、商取引の制限がかけられていることがあります。
この流れは規制が厳しくなる方向へ進んでも緩くなることはありません。
これにより、各種が分布する国から日本への「正規」の輸入はかなり制限されることになり、国内に入ってくる個体自体が減少するため、国内で繁殖を成功させないと入手が年々難しくなるということになります。
こうなると希少性から値段が上がり、密輸によって国内に入れる場合の利益が上がるので、密輸は減らないと考えられます。
これに対して既に飼育している飼育者ができる対応は、繁殖させて、自家繁殖個体を国内に流通させることが一番の方法であると僕は考えています。
種の保全についてできること
飼育者が種の保全についてできることは繁殖です。
生き物をペットとして飼う場合、金銭的なやり取りが発生しますが、金額は需要と供給を考慮して、常に市場原理により調整されており、変動しています。
値段が付くということは需要があるということですので、欲しいという人はその値段に見合う金銭を出して購入することになります。
ここで問題になるのが「希少になる」、「希少になった」種の値段で、今後手に入れることが難しくなるとわかった場合、人は投資として多少プレミアムの乗った値段でも買おうと考えます。
このようなタイミングでは密猟者、密輸者は販売したい生体の状態がどうあれ、とにかく違法な方法で入れて販売したいと考えるのではないでしょうか。
それが利益最大化につながりますし、経済的なモノのやり取りとしてはごく一般的な現象だと思います。
このような流れに対して飼育者がとるべき対応は、自分の飼育している種の保全を考えたうえで、国内流通を前提にして繁殖を行うことであると考えます。
国内で一定量の供給があれば値段の大幅な変動は避けられると思いますし、今後も供給があることがわかれば密漁して国内に入れるうまみを減らして密猟者自体を減らせると考えます。
全体的な流れに対して、一飼育者ができることは限られていますが、誰かがやらなければ事態はどんどん悪化してきます。
わずかな抵抗となっても自分の飼育している種の保全状況や分布地の野生個体のことを考えて飼育、繁殖を行っていくことが我々リクガメ飼育者の責任であると考えて僕は飼育を行っています。
まとめ
飼育者交流での話や最近のインドホシガメの値段の上がり方を見て思うところがあったので、一つの記事としてまとめてみましたが、繁殖を行うことは僕の飼育の目標として昔から持っていたものです。
ですが、最近の動向を見ると繁殖の重要性を日に日に強く感じており、健康に飼育を続けることは大前提として我が家の子たちのベビーを早く見て、安心サイズまで育て上げて送り出したいといった思いが強くなっていっています。