水槽を自作する 【設計編】
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水槽についていろいろな寸法がありますが、なかなかカメ飼育者として求める寸法の水槽は売っていません。
そのような背景から水槽の自作を試してみます。
求める寸法
水槽のサイズは60規格(60×30×36)、90規格(90×45×45)などいろいろとありますが、カメの飼育といった点からすると背が高すぎるものが多く、あまりしっくりくる寸法のものがありません。
チズガメやテラピンのようなよく泳ぐ種であれば水位30cm程度とって、優雅に泳がせるのも楽しいですが、これから飼育していきたい種には泳ぎが下手であまり水位が取れないものもいます。
今飼育している中ではヒメハコヨコクビガメがそれにあたり、60cm規格水槽に5cmほど水を張って飼育しており明らかにオーバースペックです。
高さはいらないから床面積がほしい。
このような要求にこたえる水槽は市販されている物の中にはないため、自作することにしました。
手始めに作成する寸法は(45×45×20)で、アクリルで作成します。
板厚については下記で計算して決定しました。
材料集め
とはいえ、アクリル材の切断加工には慣れていないため、業者に寸法指定でカットしてもらい、接着剤で組み合わせて水槽の形にします。
接着は大型水槽でないことから溶剤接着で行います。
必要になる工具としては直角を出せるクランプとフトコロの深いFクランプなど接着中にしっかりと固定できるようにするものです。
しっかり固定して丁寧に接着します。
力学的設計
水槽の設計として重要なポイントは側面材の厚さがあります。
底面は板厚もある程度必要ですが、どちらかというと家の耐荷重が重要です。
一般家屋は1㎡当たり500㎏まで耐えられるように設計されますが、常に荷重がかかり続ける巨大な水槽な場合、負荷は家に影響を及ぼします。
今回は軽量な水槽であるため、その計算は不要でした。
中に入るものはもちろん水ですので、水が入った場合を仮定してCADでモデルを作って計算しました。
CADは一般使用であれば無料使えるFusion360を使用しています。
Fusion360では通常のCAD機能だけでなく、計算解析(CAE)を行える機能があるため、これを使用して耐荷重の設計など飼育設備の設計に生かしています。
構造計算の中身
作ったモデルは全面が均質であるため、溶剤接着を行った現実の水槽よりも強度が高く、現実より余裕のある数値が出てきますが、設計の妥当性を見るには非常に効果があります。
溶剤接着を行った場合の強度は均質材の40%程度に低下するため、余裕を見て設計する必要があります。
今回の計算では、安全側に結果が出るように水が満水(20cm)まで入った状態を仮定しています。
水圧による加重は各面に対して垂直に作用するため、計算では水圧に対応した負荷をかけるように調整しています。
なお、側面にかかる水圧は水深が深くなるほど大きくなる三角荷重ですので、下図のような分布になります。
▲底面に行くほど側面にかかる荷重が大きい
このような仮定の下で計算を行った場合、下図のような結果となりました。
赤色になるにつれて変位が大きくなっており、底面付近ではあまり変位がありません。
特徴としては側面の上端に負荷がかかり、水槽が外側に膨らむことが確認できます。これは、水位によって変位が大きくなるため、背が低い水槽は設計が簡単です。
水位が高い水槽になるとこの膨らみが大きくなり、無視できなくなるため、板厚を厚くする、フランジを取り付ける、接着方法の変更等、途端に要求される施工レベルが増すため、僕は水位が低い水槽から作り始めています。
今回の水槽ではアクリル材厚3mmで十分に強度が確保できているため、安価に材料が調達できました。
制作に向けて
今回は理想の水槽制作に向けての第一弾として小型で背の低い水槽を制作します。
今回購入した材料は全部で4本の水槽を制作できるだけの量があります。
これで、必要になったら水槽を作ってお迎えに備えるといったことも可能ですし、小型の水槽を並べてきれいにレイアウトできるようになります。
材質もすべてアクリルを使用しているため軽量で見た目が良いのもいいポイントです。
現在1号水槽を制作していますが、接着にはコツが必要です。
ですが、このサイズの水槽を3000円以下の原価で制作できるのは自作の強みだと思います。